上富田町には、「赤い宝石」と称される希少な果実があります。それは町の木でもある「ヤマモモ」。この果実の栽培から商品開発、販売までを一貫して手がけているのが、「Kumano Berry(クマノベリー)」です。
2015年に発足した「口熊野かみとんだ 山桃会」を経て、2018年に開業。今では町を象徴するブランドとなりましたが、その原点は、意外にも「ママ友同士の何気ない交流」にありました。
「地域の子ども支援」から始まった、地域への想い
「最初は、何か地域のお手伝いができれば、という純粋な気持ちだったんです」
そう振り返るのは、創業者の樫木 美喜恵(かしき みきえ)さん。もともとは町の人とお話をしたり、ワークショップや子ども向けのイベントを開催したりと、地域に根ざした活動を行っていました。そんな中、町の木であるヤマモモの存在を知り、「これで何をしようかな?」と、シロップ作り体験などを通じて紹介し始めたのがすべての始まりでした。
樫木さんは隣の田辺市出身。以前は大阪で仕事をしていましたが、農業や食品関係の経験は全くありませんでした。結婚を機に上富田町へ移住し、栽培も加工も経営も、すべてが手探りでのスタートでした。
「助けて!」と言える強さが、壁を壊した。
創業当初は、まさに試行錯誤の連続。「どうすればいいの?」「助けて!」と、周囲のママ友や地域の人々に支えられながら、何度も壁にぶつかっては立ち上がってきました。徳島県への栽培視察などを経て、ついには「ヤマモモ」を町の指定果実に登録させるなど、ママたちの情熱が行政や地域を動かす大きなうねりを作っていったのです。
「何度も挫折しかけましたが、やってやれないことはなかった。本当に多くのことにチャレンジした日々でした」と、樫木さんは胸を張ります。
人と出会い、共に育つコミュニティ
樫木さんの活動は、ヤマモモだけにとどまりません。合同会社「つくるとつなぐ」を通じ、レンタルキッチンスペースの運営を行うほか、今では子供用品のお下がり会や、子ども食堂「放課後食堂」の運営も手がけるなど、地域を支え合えるローカルコミュニティづくりに奔走しています。
仕事のやりがいを尋ねると、「新しい出会いですね。出会いが自分を成長させてくれるんです」と即答。だからこそ、町を訪れる人々には「ぜひ土地の人と深く関わってほしい」と願っています。
次世代へのメッセージ:挑戦を応援し合える町へ
「10年後、単に住みやすいだけでなく、誰もが自分らしく生きていける町になってほしい。私がそうだったように、誰かが挑戦しようとしたとき、町全体がそれを応援し、受け入れてくれる環境を作りたいんです」
かつては町民にさえあまり知られていなかったヤマモモは、今や給食や町バスにも採用されるシンボルになりました。私たちの活動が「自分たちもここで挑戦できるんだ」という地域の希望になれるように。樫木さんは今日も、真っ赤な果実を慈しむように育てています。