この町には、年間約11万人もの人々が「スポーツ」を目的に集まります。この驚異的なスポーツツーリズムの原動力となっているのが、一般社団法人南紀ウェルネスツーリズム協議会です。
同協議会は2018年より「上富田スポーツセンター」の指定管理者として運営を担うほか、スポーツサロンや食育交流センター「バーバラ」、さらには旅行会社「和歌山スポーツトラベル」の運営まで幅広く手掛けています。単なる施設の貸し出しに留まらず、訪れたアスリートや観客を地元の宿や飲食店へ繋ぐことで、地域経済を循環させる「集客装置」としての役割を全うしています。
証券マンから地域リーグの最前線へ。
この巨大な仕組みを支える一人が、上富田町出身の嶝 和晃(さこ かずあき)さん(43)です。1982年、スポーツが盛んなこの町に生まれた嶝さんは、幼少期から野球やホッケーに親しみ、スポーツと共に育ちました。
早稲田大学人間科学部スポーツ科学科へ進学し、専門的に〇〇を学ぶ中で転機が訪れます。大学3年生の時に起きたプロ野球界の再編問題をきっかけに「スポーツビジネス」という概念に出会い、球団経営の道に強く惹かれたといいます。
卒業後は証券会社に勤務する傍ら、東京でスポーツマネジメントを修得。その後、石川県のサッカークラブ「ツエーゲン金沢」へ。地域リーグ時代からスポンサー営業やイベント運営に奔走した日々を、「当時は365日働いているような感覚でした」と懐かしそうに振り返ります。
挫折を越えて結実した、故郷への想い
ツエーゲン金沢で8年間のキャリアを積んだ後、〇〇のため帰郷。カナリーニョFCを設立した〇〇さんと共に、白浜でのサッカースタジアム建設と合宿誘致による地域活性化を計画しました。しかし、建設には高い壁が立ちはだかり、プロジェクトは一度失敗に終わります。
「次はどう動くべきか」と頭を悩ませていた嶝さんの元に届いたのが、上富田スポーツセンターからの「スポーツツーリズムで町を発展させよう」という声でした。その志が結実し、現在の協議会が設立されたのです。今では、多くの子どもたちが活動する場を提供できていることに、嶝さんは深い誇りを感じています。
地域の幸せが、企業のゴール。
現在、協議会が運営するジム「スポーツサロン」には約500人の会員が在籍し、町民の健康を支える場として愛されています。
「人口減少が進む地方において、市場が縮小していく不安はあります。だからこそ、スポーツを手段として『関係人口』を増やし、町全体を潤す集客装置でありたいんです」
嶝さんは笑顔で続けます。「私たちの目標は、地域の人たちと共に幸せになること」。
その言葉通り、嶝さんの挑戦は止まりません。現在は旅行会社の東京事務所設立に向け、さらなる高みを目指しています。
次世代へのメッセージ。
「このまま何もしなければ、町は廃れてしまう。だからこそ、若い世代には失敗を恐れずに、常にチャレンジし続けてほしい」
地域の幸せを願い、今日も嶝さんはフィールドを駆け抜けます。