梅が人々を支和歌山が誇る特産品、梅。誰もが知るその味の裏側には、決して妥協を許さない「一手間」が隠されています。
そんな上富田町自慢の梅を手掛けるのが、紀州梅干の里に根を下ろす「紀の里食品」です。昭和62年、初代・上田恒夫氏によって設立された同社は、以来「一口食べて誰かに伝えたくなるような美味しい梅干を作ろう!」をスローガンに、文字通り手塩にかけた梅干作りを続けています。
全国に約3万人ものカタログ会員を抱える同社のラインナップは、定番のはちみつ漬けやしそ漬けから、かつお梅、昆布だしの旨味が凝縮された極上漬けまで、全〇種類におよびます。
電話の向こうに広がる、お客様との絆。
主な客層は60〜70代。ネット注文が主流の現代において、同社には今も電話やハガキ、FAXでの注文が数多く寄せられます。「中には、ただお話ししたくてお電話をくださるお客様もいらっしゃるんです」と笑うのは、専務取締役の上田直基(うえだ なおき)さん(35)。
「そこで直接『美味しかったよ』というお声をいただけることが、何よりのやりがいです」
上田さんは上富田町で生まれ育ち、幼い頃から家業である梅の存在を身近に感じてきました。大学時代は〇〇県で過ごしていましたが、大学3年生の時、祖父の願いを受け継ぐ決意で帰郷。かつて自分を可愛がってくれた従業員やパートの方々に囲まれ、13年前から本格的に梅作りの道へと歩み出しました。
スポーツの町を、自慢の梅で支える。
「特産品を扱っている以上、自分たちの梅が美味しいと言われることで、上富田のPRになれば嬉しい」と語る上田さん。その言葉通り、同社の梅は単なるお土産の枠を超え、まちの活性化に大きく貢献しています。
伝統的な梅干だけでなく、上富田スポーツセンターに合宿へ訪れるアスリートのために、運動中でも手軽に摂れる「梅ゼリー」を開発。塩分補給や疲労回復効果が期待できると、選手たちからも好評を博しています。さらに2年前からは「紀州口熊野マラソン」の実行委員会にも加わり、自慢の梅を通じてランナーとの交流を深めています。
「梅干屋さんは多く、差別化は簡単ではありません。だからこそ、私たちは小さな会社にしかできない『一手間』を惜しまず、より良い製品作りを心がけています」
「上富田の誇りは、人」
上田さんに「この町の誇りは何ですか?」と尋ねると、迷わず「人ですね」という答えが返ってきました。商売人同士の仲が良く、何かあれば手を取り合う。そんな温かい繋がりがこの町には息づいています。
「この地域の基幹産業である梅は、どこかで必ず町の人と繋がっています。梅が人々えている。その実感が私の原動力です」
10年後の未来を見据え、上田さんは「人口を増やすのは難しくても、この町を知り、愛してくれる『関係人口』を増やしていきたい」と目標を語ります。自分が愛するこの町に、梅を通じて還元し続けたい。
そんな熱い想いを胸に、上田直基さんは今日も一粒一粒の梅に、真心を込めた「一手間」を加え続けています。